紫
「天狗は余所者に警戒心が強いのよ。あの大隊をよく切り抜けました」
神楽
「久しぶりだな」
紫
「そんなに急いで、あの魔女みたいに遊んでいかないの?」
神楽
「依頼をしてきた張本人が言うのか。
標的はこの山に居る。もう回りくどい手順は省いていいだろう」
紫
「できればもっと余裕を持って欲しいけど、まあいいでしょう。全て形に入ったわ。
あなたに頼みたいのは殺しじゃないの、交渉よ。
三日前から居つこうとしている『現神』とのね」
神楽
「………?」
紫
「ここは忘れ去られた存在の憩い場。
本来なら彼も歓迎すべき相手なのだけど……」
神楽
「お前でも敵わない相手だから追い出すのだろ」
紫
「私一人が倒されるならともかくね、効果範囲が強すぎるのよ。
彼は災厄の化身。本質がひとたび目覚めれば、なにもかも全てを薙ぎ倒す爆弾になる。
敵うものはこの幻想郷……いえ、この天地のどこにもいない。そう作られているの。
天狗達もそれを読み取ってか、警備が厚くなってるようね」
神楽
「余所者に下手に刺激されないためか。
……交渉といいながら、生贄にするつもりじゃないのか?」
紫
「違う違う、そう早まらない。
まあ、わずかなりとも関わりはあるのだし、気が合うんじゃないかしら。
御神楽が大事なのよ」
神楽
「得意なわけじゃあないぞ」
紫
「頼んだわよ。彼は守矢神社の奥にいる」
早苗
「私は風祝の早苗。奇跡を起こ」
神楽
「そうですか」
早苗
「ちょっと!最後まで聞いてください!あと減速!」
神楽
「詳しい話は後で。境内を案内していただけませんか」
早苗
「いいですよ。しかし私に勝てたなら。
幻想郷では常識に囚われてはいけないのです!」
神楽
「奥というのは、やはり本殿の奥か……。
現神は現人神に通じる、つまり人の姿を取った神、人の姿を取った災い。
そして俺に関わりあると言えば、やはりあいつだろうな。
………必要以上に、恐れることはない。
…………
………」
(ガラッ)
略殺戮神
「すわこちゅわーん♪んん〜すわこちゃんはわが孫のようにかわええ〜のぉ〜」
諏訪子
「あーうー」
神奈子
「こーら助平!酔っ払いすぎだってば!アハハハ!」
諏訪子
「うーあー」
唯一略神
「ほっほっほ酔っとらん、わしは酔っとらんぞ〜」
諏訪子
「うそつけ」
略
「ほっほっほっほ!」
神楽
「……………」
(ピシャッ)
(ガラッ)
略
「これ、そこの。なにか言うことは?」
神楽
「すみません。お邪魔しました」
略
「構わん、入れ入れ。人間と飲むのも一興じゃ」
神楽
「いえ、私は神の宴会に入れるような者では。降ろしてください」
略
「ほいっ!じゃじゃ〜ん!」
諏訪子
「おお!」
神奈子
「サボテン!」
略
「かなこちゃ〜ん、先に言わないでほしいの〜」
神楽
「降ろしてください」
神楽
「どうやら、私が鎮めるべき神とは、貴方様のことのようです」
略
「わしは十分鎮められとるぞ?
うちの巫女ちゃんがちょっと留守にした間、遠出してみたら幻想郷を見つけてのう。
まさかこんな場所が有ったとは、まさに天国、いや幻想のような郷じゃ。
毎日供物の時間以外は酒盛りしに来るんじゃ」
神楽
「己が無知ゆえに名を知りませんが、神よ」
略
「唯一絶対超絶究極大殺戮じゃ。ゆーちゃんで覚えとくれ」
神楽
「唯一絶対超絶究極大殺戮神、ここに来るべきではありません。
あなたが愛する幻想郷の為にもお帰りください」
神奈子
「あの手品師、傘回ししながら何話してんの?」
諏訪子
「ゆーちゃんの巫覡さんなのよ」
神楽
「違います」
略
「ほっ、なかなか器用な奴じゃな。
しかし、確かに……ここに住む天狗の女の子達も、わしを畏がっておった。
受け入れてくれたのはすわこちゃんとかなこちゃんの二柱だけ。
村でもわしの信仰は衰えていない。幻想郷に来るのが早いことはわかっておるのだ。
だからこそこんな良い所で、暴れやせんのだが……」
神楽
「力の衰えてない神はただそこに居るだけでも、気を、人心を乱します。
どうか自らの土地にお戻りください」
略
「強情な奴だのう。己が仕事のためか」
神楽
「………」
略
「では覚悟せい。
……わしは弾幕遊びも強いぞぉ〜?」
神奈子
「イエーイッ!!」
諏訪子
「私も!私も遊ぶ!」
略
「はいはい♪お先にどうぞ♪」
神楽
「………はあーあ……」
諏訪子
「あうー」
神奈子
「なにこの巫覡マジになってんの」
神楽
「できれば貴方様とは関わりたくないのです。
最強像の具現というのは容赦を知らないので」
略
「これこれ〜そういうのは言っちゃいかんな〜」
神楽
「触らないでください。というか掴まないでください。
あなたに比べれば身体は脆いのです」
略
「ぐぬ」
神楽
「私の勝ちです。
約束の通り、お帰り頂けますね」
略
「ぐぬぬぬ……
……今一度、我が名を申してみよ」
神楽
「唯一絶対
……………えー…究極?」
略
「隙あり!」
神楽
「ぎゃっ」
神奈子
「ここで出た!ゆーちゃん選手の新技!
本来は極められることないうろおぼえの形で、強引に極めている!まさに神のマジック!」
略
「ほれ審判!カウント!」
神楽
「唐突に本殿をロープの無いリングにする、これが幻想郷の……
というかただの力技じゃねえかいだだだだ」
神奈子
「 セブーン シーックス チャンピオン防衛なるかーッ!? ファーイ 」
諏訪子
「だめよー、境内で変死体はイメージダウンよー」
神楽
「そして酒の回った神々に助け船は期待できず痛えな糞っ!」
魔理沙
「やあ、また会ったな。
……どうした?恨みを買った覚えはないぜ?」
神楽
「売った覚えがないからな」
魔理沙
「たしかに儲けは無さそうだ」
神楽
「早く引き返せ」
魔理沙
「その奥に今回の元凶が居るんだろ?
私にも見せてくれよ」
神楽
「好奇心に殺されにいくのか。
この世で最も恐ろしいものが何か、教えてやろう」
魔理沙
「あいにく、人間が一番怖いのは知ってるぜ。
しかしなにやら凄い音がしたぞ。あらら、壁と天井が抜けてるよ」
黒贄
「……うーん、どうすれば事務所に帰れるのやら」
魔理沙
「おや、あんたは誰だ?」
黒贄
「黒贄といいます。おそらく、あなたが入り口ですれ違った方との知り合いです。
先ほどまではタッグと言ってもいい仲でしたね」
魔理沙
「で?」
黒贄
「いえ、関係ありませんが、やはり出番が少なすぎるだろうと」
魔理沙
「あー……神様居る?男のが来てるって聞いたんだけど」
黒贄
「たった今、私と神遊びをしたのち退散されました。
なんでも乱入も演出とか。このような場所で決着は付けるべきではないとか」
魔理沙
「メタメタだけどいいんだろうか」
黒贄
「はて?意味が解りませんな」
魔理沙
「それでー、おっさんの仲間って事は。あんたも忍者?あるいは侍かな。眠り狂四郎的な」
黒贄
「殺人鬼です。うーんその例えでは、欧米のモンスターに近いかと」
魔理沙
「おっと、ピンチだぜ」
黒贄
「やはり生気溢れる人間は安心しますね。殺してもよろしいですかな?」
魔理沙
「じゃあこっちのルールで決めよう」
魔理沙
「あーあ私としたことが、避けるのに飽きちまった」
黒贄
「大丈夫ですか?
っと、仮面の準備を忘れてました、えーと」
魔理沙
「……この帽子を目の辺りまで被るのは?」
黒贄
「ではお借りしましょう。視界が無くとも何とかなりますので。
ニャルバ、いや違う。ニョラビー、いやニョラベー……」
魔理沙
「………」
神楽
「諦めるには早いぞ」
黒贄
「ニョばらばっ!?」
魔理沙
「うわっ!」
神楽
「目を離さず、外へ出ろ。奴は観測している間は再生できない。それだけが分かっている」
魔理沙
「……こ、このスプラッターに目を離すなって、ちょっと私には酷なんだけど」
神楽
「ならさっさと走れ。走れるならな」
魔理沙
「わかった、そうさせてもらう。あんたも殺されるなよ」
神楽
「どうだろうな」
魔理沙
「そんな挨拶はないだろう?
また会おうな!」
神楽
「………!」
紫
「お疲れさま」
神楽
「………『神隠し』されるのは、慣れる気がしないな。
もっと早く来い。あいつはどうなった」
紫
「サイコロ肉のまま彼の事務所に送ったわ。八雲運送は監視サービス付きよ」
神楽
「……元々は奴をあの神にぶつけるつもりが、コントロールが出来なくなった。
神を追い返し、奴を無力化するために俺へ依頼したって所か」
紫
「なかなか単純明快な回答だけど。
あの二体がどうやって結界を破ったのか、どうして私の能力に容易く抵抗できるのか。
それは未だに分かってないの。慌てて強化した結界も心もとなかったわ。
だから自然と悪さをする気も起きない『因果律』に誘導して貰ってたの。
あるべき世界へ立ち戻らせるために、あなたも一要素として必要だったわけ。
正体不明の力が減衰した頃に、幻想郷は彼らを受け入れるでしょう。
今回はお試し期間ってことで、はたして楽しんで貰えたかしら?」
神楽
「お前の苦労話はどうでもいい。あの魔女は無事か?」
紫
「換わりの帽子が見つからないって愚痴ってる」
神楽
「そうか」
紫
「……あら? もしかして留まりたかった?」
神楽
「気になっただけだ」
紫
「そうね、ちょっと似てるかもねえ。
才能を努力でカバーしてるところとか、素直じゃないところとか……」
神楽
「嫌味を聞かせる為に助けたのか?」
紫
「はいはい、アジトに送ってあげるわ。幻からの生還おめでとう。
そうしたら、もう逢う事はないと思うけど?」
神楽
「二度と連れ出すんじゃないぞ」
紫
「……押すなよ!絶対押すなよ!……っていう奴?」
神楽
「知らねえよ」
諏訪子
「………怖っ………かったー!!」
神奈子
「怖ーっ!視界に入ってなかっただけ幸運だったー!!」
諏訪子
「スキマ妖怪が仕事したわー」
神奈子
「冗談通じない存在そのものじゃない。怖っ。消滅するとこだったわ。
ゆーちゃん帰った?」
諏訪子
「ゆーちゃん?ゆーちゃーん!」
早苗
「神奈子様、諏訪子様……もう知らない神を家に上げるの、やめましょうね……」
「……なんだ夢か」
「ちょっと、勝手に夢の国の住人にしないでくれる?」
「だってなあー。
真っ赤な髪で猫耳のついた人間なんてのは、現実世界でもあんまりいないし。
そいつに猫車で運ばれてる、なんて状況も、なあ」
「人間じゃなくて、猫又のお燐だよ」
「そういう設定な。じゃあ俺はターミネーターの大曲おじさんだ」
燐
「ふーん、なんだかおじさんは燃え難そうだねー。体に余計なものが混ざってる」
大曲
「生身は半分くらいしか残ってないぜ?
若気の至りってやつさ。この間もまた人工部分が増えた所だ」
燐
「そんなに若く見えないけど」
大曲
「悪かったな」
燐
「とりあえず、あたいだって生きたままの死体は焼かないよ」
大曲
「なら殺されてから焼かれるのかい?」
燐
「未練は無いの?」
大曲
「どうせおまけの人生だ。いつ終わっても気にしないさ」
燐
「ふーん、おじさんは死んだように生きてるんだねー」
大曲
「まあな。……ま、最後の一服ぐらいはしとくか」
燐
「さあさあターミネーターさん、まもなく灼熱地獄が見えますよー」
大曲
「はいよー」
大曲
「あれっ」
藍
「ごめんなさい。すぐ起こしますから」
大曲
「なんて?」
藍
「これはちょっとした手違いで」
大曲
「いや、だから」
藍
「ようするに夢です」
大曲
「なんだやっぱりな」
藍
「………」
大曲
「猫耳の次は狐耳の女が連続で、新婚早々疲れてんのかね、俺」
藍
「は、はあ……そうなんじゃないですか。ちょっと待っててくださいね」
紫
「……むにゃ、あと5分……」