妖夢
「貴様!生きているな!?」
黒贄
「ええまあ」
妖夢
「ここは生きた人間が来るべき所ではない。早々に去れ!」
黒贄
「ややっ看守の方でしょうか。閻魔さんに地獄で反省しろと言われたのですが」
妖夢
「………そ、そうか。貴様のことか。
これ以上進めば白玉楼の石段。近付く事は許さない」
黒贄
「ふむ、ではどこまでが地獄なんでしょう」
妖夢
「………えーっと…」
黒贄
「…何を?」
妖夢
「この線からあっちが地獄。越えたら切る!」
黒贄
「では戻ります」
妖夢
「ああっそっちも駄目!極楽側の死霊がいるの!」
黒贄
「………
結果、この畳一枚分が地獄であると」
妖夢
「うん。これでよし」
黒贄
「寝ると頭が出ますね」
妖夢
「もうちょっと広げようか?」
黒贄
「ああ大丈夫です。取ってしまえば入ります」
妖夢
「みょん!?お化け!」
黒贄
「あなたもどこからどこまでが死んでるのでしょうな?」
妖夢
「ひぃぃ、人殺しぃ」
黒贄
「いえいえ、全部死人にするつもりはありません。
どうせ幽霊になるだけでしょうし。……はぁ」
黒贄
「おぉ…立派な樹だ。
地獄といっても、それほど悪い景色ではありませんな」
幽々子
「西行妖が気に入りました?
今は地獄も極楽も曖昧ですけど、これは変わらず桜の姿」
黒贄
「いやはや、生者の国と同じく表意一体ですか」
幽々子
「場所によっては、違いは住人の生死ぐらいかも。
ここ以外の霊界は知りませんけど」
黒贄
「葉も花もなくとも、素晴らしい生命力が伝わってきます。
死者の国にあるのが惜しいほどに……いやまあ、植物ですが。
雪化粧だけではなく、満開の姿も見てみたいものですな」
幽々子
「私も度々思う。花を雲と湛えた妖怪桜は、さぞかし素晴らしい姿だと。
また春を集めてこようかしら」
黒贄
「はて、季節は集められるものでしたかな?」
幽々子
「ああでも、いけないわ。それでは幻想郷の春が尽きてしまう。
しかも満開になると根元の死体が蘇るの」
黒贄
「げっ、ゾンビですか」
幽々子
「まあ、別に困りはしないけど」
黒贄
「私は困りますねぇ。以前に嫌というほど見ましたし」
幽々子
「また止められるのかな〜。どうしよう〜やっぱり気になるわ〜」
黒贄
「やめたほうがよろしいかと…」
幽々子
「えい。…あれ?」
黒贄
「とりゃっ。おや?
……ま、まさか…」
幽々子
「あなた…あなた、
ももももしかして……」
黒贄
「幽霊」
幽々子
「蓬莱人」
黒贄
「……ひぃいいいいい!!」
幽々子
「ぃいやああああぁ!!」
黒贄
「あわわわわわ……」
幽々子
「きゃああぁぁぁぁ……」
黒贄
「………」
幽々子
「………」
黒贄
「いえ、解ってましたが」
幽々子
「一応やっておかないとねぇ。
ところでこっちでは、幽霊と亡霊も使い分けますのよ。
あそこでふよふよ漂ってるのが幽霊で、私みたいなのが亡霊」
黒贄
「それを言いましたら、私も蓬莱人というものではありません。
普通の人間より多少丈夫なだけです」
幽々子
「地獄へは観光に?」
黒贄
「とある事情で、生きたまま裁かれました」
幽々子
「よっぽど極悪人なのねぇ」
黒贄
「いやはやお恥ずかしい」
幽々子
「気にしない気にしない。生きてたら色々あるわよ」
妖夢
「…なに意気投合してるんですか」
幽々子
「きゃっ不死身!」
黒贄
「ひぃっ亡霊!」
妖夢
「…さっき会ったでしょう」
幽々子
「挨拶よ」
黒贄
「基本ですな」
妖夢
「……あなたは地獄のほうの住人ですよね?
こんな所に来てないで責め苦に戻ってください」
黒贄
「いたぶるのは趣味じゃないんですよねぇ。しかも、相手が死んでいるとなると尚更で」
妖夢
「だれが鬼側に回れと!」
幽々子
「まあまあ妖夢、お客様に失礼よ。食前酒は何がいいかしら」
黒贄
「いえいえそんな厚かましい。
お酒はわかりませんし人肉以外の好き嫌いはないです」
妖夢
「…なんだか嫌な予感がする」
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