文
「清く正しい真実報道 文々。新聞でおなじみ射命丸文です。
私は今、スキャンダルの真っ只中にある紅魔館に突撃取材中です!」
パチュリー
「…ハプニングの間違い?」
美鈴
「くう!蛾みたいにちょこまかとぉ!」
文
「幸いにも悪のメイド長と館の主は留守中との情報、心おきなく取材が可能で痛だぁ!」
アリス
「あらしまった」
文
「絶対わざとでしょう…、ピアノ線ががが」
アリス
「自ら事件を作りに来たの?」
文
「いいえ違います。
客人のあなたも、紅魔館の生臭い噂は聞いているはず」
アリス
「そりゃあね」
美鈴
「吸血鬼の館でいまさら…」
文
「人さらいなどではありません」
アリス
「じゃあ何?」
文
「それは家庭内にある、血を分けた姉妹の血で血を洗う闘いですよ!
さながら檻越しに見る猛獣の喧嘩!他人の不幸は蜜の味!」
アリス
「…外の女性誌でも読んだのかね」
文
「えっ?……もうあるジャンルなの?」
アリス
「………」
パチュリー
「………」
美鈴
「………」
文
「斬新だと思ったのになー…
なんか萎えた」
アリス
「帰れ!」
文
「い、いや、実は私、囮でして。
今頃特捜班がフランさんと接触を…」
アリス
「えっ!?」
美鈴
「なんですと!?」
パチュリー
「………
…お気の毒様」
アリス
「粉々ね、その天狗」
文
「……え」
アリス
「そういうことだから、もう帰りなさい」
文
「せ、せめて様子をー」
美鈴
「………?これは……」
アリス
「……フランちゃんの笑い声」
パチュリー
「今気づいたけど、さっきから鳴ってるのは金管楽器かしら」
アリス
「………
…行ってみましょう」
フラン
「確かにいるのに外にいる。口笛だけが中にいる。
うふふ見つからない。右手だけ壊せたけど。
見つからない……見つからないとふふっ、壊せないじゃないの。
はは、ははははは、あはっはははは」
美鈴
「うわっ、やっぱり壊れてる」
フラン
「そこだッ!」
美鈴
「ひぃ!?やめてください!」
フラン
「…これはコートの裾、その下は門番。見つからない。
もーいいわよ私の負け!かくれんぼ終わり!姿を見せてよー!」
美鈴
「妹様、侵入者は私に……そっちも手伝ってくださいよ」
文
「いやです」
パチュリー
「……めんどい」
アリス
「かくれんぼに参加したくないし」
美鈴
「こんな役目ばかりだ」
フラン
「見つからない見つからない見つからない外くらい連れて行ってそれぐらい…
……はぁ。口笛も消えちゃったわ」
美鈴
「落ち着きましたね?ああ、よかった」
文
「それではインタビュー」
フラン
「烏天狗さん、お久しぶり」
文
「ぶっちゃけこの軟禁状態をどう思います?」
フラン
「気にしてないわ。お姉様は私を守ろうとしてるだけよ」
文
「あー、そうですか。しかし本音は…」
フラン
「そうよね?お姉様」
文
「げぇっ!?……」
アリス
「わっ消えた」
レミリア
「咲夜の手品でお帰り願ったの。
こんばんわお客人」
アリス
「……毎度ながら反則級よね」
レミリア
「フラン、いい子にしてた?」
フラン
「………
……
今日の月も大きいかしら」
レミリア
「………
……
…雨が降ってるから見れない」
フラン
「降らせているんでしょ?」
美鈴
「………」
アリス
「………」
パチュリー
「………」
レミリア
「そんなことよりお茶にしましょう」
フラン
「テラスで飲みたい」
レミリア
「はいはい、今日はこれから晴れる運命よ。
お客様もいかが?」
アリス
「……い、いえ、お邪魔しました」
レミリア
「じゃあそちらは?」
里火
「残念だが、物が飲める体ではない」
フラン
「あ!出てきた!」
レミリア
「席に座ってくれるだけでもいいわ。妹と遊んでくれたお礼よ」
文
「紅魔館で取材していたと思ったら、いつの間にか外にいた。
手品だとかそんなチャチなもんじゃあ……」
里火
「戻ったぞ」
文
「おおっ特捜班!無事だったか、収穫は!?」
里火
「茶会に同席した」
文
「でかした!なにを聞き出したの!?」
里火
「なにも」
文
「ええぇー」
里火
「あの子の能力について聞かされて、
わしが見てきた『外の世界』について話した。
特に面白くもないだろう」
文
「なんだ説得に利用されたわけ。使われやすい奴め」
里火
「わかることは、あの館で諍いなど起こりそうにない。ということだな」
文
「……まあ、かまわないわ。別のネタを探すだけだし」
#13 いつかの閑話
「いかがでしたか?」
「……外へ出られることは解った。だが何故か、調節が合わなくなる」
「以前に仰っていましたね。周期的に適応できる次元が変わってゆくと」
「うむ。しかし地続きの場所でこのようなことが起こるとは」
「もしかしたら」
「?」
「幻想郷には大きな結界が二つ、重ねて張られてますの。
なので外とは勝手が違うこともままあります」
「そうか」
「異次元と言っても過言ではないくらい」
「………」
「ここでは外の常識が非常識、非常識が常識となっているのです。
外界の者が容易に踏み込めないよう」
「関係しているかもな」
「……最大級の暗殺組織スケルトンナイツ。しかしてその基礎は、
神羅万将の率いる異世界『アルメイル』からの亡命者たち。
あなたもその一人。ブラックソードと名乗り、仕事に協力していた」
「………」
「責めはしませんわ。理由があってのことでしょうし」
「罪を覆せるほどの理由などありはせぬ」
「組織の話はお気に召しません?
以前の続きもお聞きしたいのですが」
「……アルメイルの住人は、例外なく地上を求めておる。
それを現王が抑えている状態だ。地上の資源が枯れぬ為に」
「切欠さえあれば暴動…いえ、侵略が始まるという事」
「今の政治方針が続けば問題ない。
お主達の目的は、『月の都』の目から逃れ、平穏に暮らすことだけだろう」
「だから戦争などでぐだぐだともめてくれては面倒なのです。
不死身の軍隊という驚異が現れたら、月も黙って見ているわけには行きませんもの。
地上の勝利は望み薄。幻想郷も残るか分からないのでしょう?」
「………」
「意見を頂きたいのです。『地上』を除いた『月』と『異世界』、
私たちはどちらに逃げれば良いのでしょう?」
「……今日はこの位にしてくれ」
「お疲れですか」
「話を聞いて貰いながら難だが…」
「私とは合わない」
「………」
「奇遇ですわね。私もそう思ってました」
#14 ともあれ日常
1
輝夜
「皆とかっこいいスペルカードを考えた!!!」
里火
「楽しそうでなによりです」
輝夜
「敬語はやめてよ」
里火
「……うむ」
輝夜
「剣さんの技も考えたから」
里火
「なっ」
輝夜
「候補その1、『奔鷲飛び』
その2、ヒーローっぽく『ディバイディングドライブ』
3、『次元調律』
4、あえてお茶目に『抜け道』」
里火
「………」
輝夜
「どれが良い?」
里火
「…と、とても選べぬな。
それぞれ悩んで考えたものだろうし……」
輝夜
「じゃあ勝手に決めてあげよう。
おーい、剣さんがディバイディングドライブ見せてくれるよー」
里火
「なっ」
里火
「ゲホッガハゴハッ、あ゛ー……叫ゲホッ」
輝夜
「聞いてるこっちも苦しいわっ!」
里火
「……ただの『異次元を使った距離短縮』だ。それでいい」
輝夜
「長くて舌噛みそう。その方向なら『次元調律』は?」
里火
「ではそれで…」
輝夜
「じゃあ次ー。
刀が別空間から出てくる技はー」
里火
「勘弁してくれ」
2
ウーリューフェン
「ヤバい、洋ゲーFPSの本気クオリティヤバい。半端ない」
輝夜
「でしょ?面白いっしょ?」
ウーリューフェン
「これクリアしたいぃー置いてってぇー」
輝夜
「家宝の一つだから駄目ぇー。発禁受けてプレミアついてるの」
ウーリューフェン
「……レイティング団体はホント空気読めないな。今度潰してくる」
輝夜
「というかあんた、日頃からリアルファイトしてんじゃん」
ウーリューフェン
「リアルは初期値の差ありすぎなんだよ。ストーリー性も無いし」
輝夜
「ふーん」
ウーリューフェン
「……3D酔いしたー。面白いけど疲れるなー」
輝夜
「息抜きにドクターマリオやる?」
ウーリューフェン
「たまには落ちモノもいいよね!やる」
輝夜
「これって面白いけどー、未だに慣れないわー」
ウーリューフェン
「……ちょっと教えてくれる?」
輝夜
「ドクターマリオ知らないとか……」
ウーリューフェン
「いや、今までのと全然ジャンル違ってたから、敬遠しちゃってさ。
トルネコのダンジョンも興味出なかったしー」
輝夜
「あ、キャラゲーに警戒するタイプだ?」
ウーリューフェン
「うん。しかもトルネコの方はさー、先にシレン買っちゃったから。
一回クリアして、こんな感じならまあいいかな?と思っちゃって」
輝夜
「あぁーはまらなかったか。私は親近感沸いて好きだけどなー。
ローグ系好きそうじゃないもんねぇ。あんた」
ウーリューフェン
「とりあえずギタン強過ぎじゃね?」
輝夜
「敵がギタンを投げたことはあって?」
ウーリューフェン
「えっ」
輝夜
「あの風来人の腕力は常人のそれじゃないのよ…
いや、握力か…こう、指ではじいて、散弾の如く」
ウーリューフェン
「なにそれこわい」
里火
「―――……ぬあッ!!?
夢か!っそうか、良かった!
…夢だと!?」
イナバ
「落ち着け。
寝るなら布団しいて寝てください」
ウーリューフェン
「おひさー。ねぇねぇねぇこの間魔王になったからさ、
ちょっとあのゲームの開発元まで行ってきたんだけど」
輝夜
「おーおひさ。出世したねー収穫あったー?」
ウーリューフェン
「親切にもタダでくれたよ。涙流してたね。英語で『これで勘弁してください』って」
輝夜
「↑と英語で書いてある」
ウーリューフェン
「ボンガロwwwやめwwwwそれツボwww」
輝夜
「サニーパンチ!ドゥクシドゥクシ!」
里火
「………」
3
イナバ
「てゐーっ!こんなところに墨水入りのバケツなんか置いて、
地味な悪戯するんじゃってうわ!」
里火
「…この戸に仕掛けてあった。
助かったな」
イナバ
「い、いや。あなたが助かってないじゃないですか」
里火
「掛からないと後で泣くのでな…」
イナバ
「……だからって頭から…脱いでください。洗います」
里火
「いや、どうせただの墨水だ」
イナバ
「乾くとカビ臭い…」
里火
「………次元移動の間に消える」
イナバ
「やめなさいって。ほら脱衣所行って」
てゐ
(…鈴仙ターゲットだったけど、あいつが引っかかったみたいね。
もともと黒っぽいのにさらに真っ黒。ふふふ!)
里火
「顔は見てはならぬ。絶対にだ」
イナバ
「はいはい。帽子ですね?」
てゐ
(?)
里火
「いや…覆面があれば越したことはない」
てゐ
(ほほー…)
イナバ
「…あるかな。師匠に聞いてみ……てゐ!」
てゐ
「見るなと言われちゃ見たくなる!
カゲマンの、正体見たり侵略者!?」
イナバ
「あっこらっ!」
てゐ
「……わわわわ」
イナバ
「大丈夫です!すぐ閉めました!こらてゐ、患者さんを…」
てゐ
「ふ」
イナバ
「……ふ?」
てゐ
「ふた口だぁ!やあああぁぁぁ…!」
イナバ
「………」
永琳
「あら、コスプレですか?」
里火
「……いや」
イナバ
「師匠が用意したんでしょうに」
永琳
「すみません。服はできていなくて」
イナバ
「シャツとズボンは無事だったんですよ。できてないって何をこだわって…」
輝夜
「………」
イナバ
「ああ」
輝夜
「………
我は空、我は鋼、我は刃!」
里火
「!?」
輝夜
「我は一振りの剣にて全ての…ちょっ、事象干渉早いって!」
イナバ
「輝夜様の所為か……てゐ、何してんの?」
てゐ
「ふた口よ!食料が食いつくされる前に隠すのよ!」
イナバ
「落ち着け落ち着け」
里火
「………」
イナバ
「輝夜様に追い回されて疲れたでしょう」
里火
「それは構わぬが……見られてしまった」
イナバ
「あ、てゐですか。言い聞かせたから大丈夫ですよ。
顔の配置が変動してるくらいどうってこと」
里火
「!?」
イナバ
「ああっ!すみません黙ってて!
えと、光波をいじって……えーと……」
里火
「……いや、方法は良い。いつから」
イナバ
「初対面の時から……、
お、怒ってます?流石に仮面だと表情が見えないので」
里火
「……気持ち悪いとは、思わんのか?」
イナバ
「なにがでしょう?」
里火
「………」
イナバ
「……やっぱり怒ってますよね?」