それはまだ

 

 

「瞳」

 

 


ウィリアムシェイクスピア オセローの一文より引用

 

 


・緑は安らぎを与える

・緑は侵略する

・緑は命である

・緑は嫉妬である

 

 


緑とは、両義性を持つひとつの記号でしかない

ただそこにあるだけならば 記号そのものに意味はない

君はしばらくの間 そうした『孤立した記号』だったのだと

そう思っているのだろう

 

 


記号として扱ってきた人々に まるで信号機のように

窺われて 素通りされて 凍り付いたつもりでいた

なのに 君の心を覗き込んでくれる人が突然現れて

動揺してしまっただけなんだろう

 

 


太陽に透かした新葉が靡いている

カワセミの羽根が河面から飛び発ち輝いている

アルコールランプに翳されたホウ素が燃えつきていく

重い土に埋まった翠玉が割れ その断面を晒している

 

 


数ミリの闇の向こう 君の心は揺れ続けている

 

 


つまり割れたワイン瓶の切っ先

自らを傷つけて出来た攻撃性

つまり走る兵士のカモフラージュ

自身が傷付かないために覆い隠す

しかしできることなら 誰も傷つけずに終戦したい

 

 


瞬きをするたびに電光が走る その可視光線を覗けば眼が焼ける

それは実はウラニウムの輝きで 近くにいるだけで心臓が刺されていく

君自身も削れていく

怪物も それに立ち向かう存在も

君自身に他ならない

 

 


愛も激しさも君の中に存在する

 

 


いつしか 枯れることなく深みを増した緑が

大切な相手を映すとき