"契約第一の傭兵_2"



 あと半年で卒業という夏。
 彼女は俺の仕事ぶりを大層気に入ってくれたのか、契約の延期を提案して来た。

「契約主はあんたのお父さんだからなあ」
「お父さんに電話しますね」

 そういって彼女はスマホを操作する。熱心なことだ。

「もしもしパパ? あのね、シアンさんのことなんだけど」

 しかし、彼女が話している相手が自動音声だと気付いた。

「ね。好きにしろって」
「いや、待て。納得できない」

 通話記録はなし。
 契約時に控えた住所の場所へ、ようするに彼女の実家へ行くことにした。



 パスポートを取って、飛行機を乗り継いだ。なぜか彼女もついて来ていたが都合がいい。

「こっちであってるのか?」
「ええ」

 どんどん人気のない郊外へ出ていく。

 そうして長く使われてない、廃墟の屋敷にたどり着いた。

「契約主なんて、本当にいたのか」

 俺の言葉はむなしく響くだけだ。

「ずっと守っていてくださいね」

 その隣で、彼女が微笑む。



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