"知略に長けた宰相_2"
数年後。
空港で『彼女』と再会した。
前よりも身綺麗さを保っている自信はある。彼女は友人との卒業旅行だという。
「医者は無理でしたが現地の人間に大変気に入られまして小売業を始めました。まあまあ順調ですね。事業が軌道に乗ったら議員になるため政治学も勉強しています」
嘘のような経緯だが嘘はついていない。運が良かったとしか言いようがないだろう。
ちょっと半信半疑なのかあいまいな表情で『彼女』は笑っている。
「もう嘘はおつきにならないんですよね」
「つきませんよ。ただ、有利に進めるための言葉を選ぶだけです」
「結局隠してるじゃないですか」
「そうおっしゃるあなたこそ、私に隠し事がないとでも?」
やはり彼女は、言うつもりは無いらしい。
「どれほどの富を手に入れても、あなたの存在は見上げる場所にある。きっとあなたの隣を手に入れた時に、私の人生は終わるのでしょう」
私は言って立ち去ろうとした。
しかし彼女の手がスーツの袖を掴み、私を引き留める。
「お手を」
手の甲に口づける。
「では、また会いましょう」
遠い昔、私/俺/僕はあなたの騎士だったのかもしれない。
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