"四つ腕_2"



 孤児院は思った以上に開けていて、それから清潔だった。
 これがいつまで続くかは俺たちの頑張り次第だと言われた。
 鼻につくが、なにもかも任せきりになるより悪い気はしなかった。

「話がある」

 ふたりきりで。ガキどもが囃し立てる。

 壁際に立ったエルレシアに俺は聴いた。



「お前、人間じゃないだろ」


 真直ぐこちらを見返してくる。二本の腕を壁について、逃げないように囲う。

「会った時から臭いんだよ。いや、無さすぎるんだ。生きてる奴なら何かしら臭うし、脈の音だって聞こえるはずだ。演技のために心臓動かしてんのか?」

 奴はただ微笑むだけだ。

「何者だ。お前」
「女神、と言われたことならありますが」
「冗談はやめろ」
「知りたかったら、これからも一緒に居てくれますか」

 答えはおあずけらしい。


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