"妹思いの勇者_2"



 葬儀場には、死者の誹謗中傷が書かれたビラが散らばっている。

 喪主の母親と話し合う『彼女』。
 母親はさめざめ泣きながら、

「また、新聞社の方ですか。内内での問題ですから、お手柔らかに」

 疲れ切っているのか、否定も聞かず事件の顛末を語り始める。

 妹の婚約に反発し、長男は妹を連れて逃げたらしい。
 数年後、長男は山奥深くで死体として見つかっただとか。
 野生動物に食い荒らされ、長く雨風にさらされたためか、
 僅かな骨と大きな剣鉈しか残っていなかったとか。

「あの山は誰も入らないから、抜けられると思ったのでしょう。藪に使ったのか、鉈が見つかって、それから少ししてモナサムが…」

 妹はまだ行方不明扱いで捜索中。
 ビラは、妹が本来嫁ぐ先の関係者が撒いたのだろう。

「こんな人達だとわかっていたなら、私もあの子に無理を言わなかった。今更だけれど」
「妹さんは、どこへいったんでしょうね」
「さあ。お兄ちゃんがこんなことになってしまったから、どうせ……」

 はっ、と、母親は顔を上げる。

「よく見たらあなた、あの子によく似ている」

 面影を宿している『彼女』はその場から去っていく。



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